テクノロジー・材料

ガラスにおけるテラヘルツ光の吸収スペクトルを再現可能な新しい誘電関数を提案

記事イメージ画像 (Image by SuperPuay/Shutterstock)

一般に結晶やガラスなどの凝縮した物質は電磁波を吸収しますが、その際、電磁波の周波数に応じ、テラヘルツ帯を境として、低周波数側では音波の性質、高周波数側では光学的な性質を持つようになります。ガラス形成物質では、その境界において、格子振動(結晶中の原子の振動)に起因する、ボゾンピークと呼ばれる普遍的な集団原子振動が現れます。しかしながら、物質の光学特性を評価するための、従来の基礎的な誘電関数では、この特異なダイナミクスを説明することはできませんでした。


今回、本研究グループは、光(電磁波)と格子振動が相互作用した場合に形成される、フォノン-ポラリトンという準粒子の概念を用いて、ボゾンピークによるガラス特有の光吸収を表すことができる新しい誘電関数を提案しました。この提案では、ボゾンピークよりも低い周波数側では光の減衰が少なく、高い周波数側では散逸が大きいという事実に基づき、従来の誘電関数では説明できなかった、減衰の周波数依存性の表現を可能とし、一つの関数でボゾンピークの出現も表すことができます。この新しい誘電関数により、これまで困難だった、ガラスのテラヘルツ帯吸収スペクトルの定量的理解・解析を進めることが可能になります。さらに、この関数は、光が不規則的な格子振動中の伝搬を記述する理論的枠組みを応用しており、ガラスの格子振動のみならず、磁性など他の性質に起因する新しいボゾンピークの発見や、その理解に必要な基礎知見の構築にもつながることが期待されます。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学数理物質系物質工学域
森 龍也 助教

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