テクノロジー・材料
有機固体電解質中のプロトン伝導メカニズムを解明〜高効率な燃料電池の設計指針に〜
(Image by Alexander Kirch/Shutterstock)
堀 優太 助教
金沢大学理工研究域物質化学系
井田 朋智 准教授
水素エネルギーを利用する燃料電池は、電解質上をプロトン(H+)が伝導することにより動作するもので、効率的なクリーンエネルギーシステムとして注目されています。しかしプロトンは非常に小さく軽いため、位置や動きを実験的に観測するのが難しく、伝導メカニズムはよく分かっていませんでした。
本研究では、水分子を含まない無水プロトン伝導物質として、コハク酸とイミダゾールから成るプロトン伝導性有機結晶(コハク酸イミダゾリウム)を対象に、分子中のプロトンの位置や動きを可視化し、分子レベルでのプロトン伝導メカニズムを解明することに成功しました。理論計算と実験を組み合わせ、結晶内のプロトン伝導が関わる「分子構造変化」、「分子運動」、「プロトン移動」の関係性を調べたところ、結晶内での整列された分子構造中で、イミダゾール分子の回転運動とイミダゾール-コハク酸間のプロトン移動が連動することによって、結晶内で効率的にプロトンが輸送していく様子が明らかになりました。
今回の結果から、燃料電池の固体電解質材料として、高いプロトン伝導性を示す無水プロトン伝導物質を設計するためには、分子の回転運動やプロトン移動を効率的に引き起こす材料の探索が重要であることが示唆されました。
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プレスリリース研究代表者
筑波大学計算科学研究センター堀 優太 助教
金沢大学理工研究域物質化学系
井田 朋智 准教授