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ルテニウム複核錯体を光触媒として用いたCO2からCOへの還元反応を開発

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 ルテニウム(Ru)複核錯体を、自己光増感能を有する光触媒として用い、二酸化炭素(CO2)から高選択的に一酸化炭素(CO)を与える光触媒的還元反応を開発しました。気相中の初期CO2濃度を1.5%まで下げてもこの反応は高効率に進行し、加えたCO2をほぼすべてCOに変換できることが示されました。

 植物の光合成のように、太陽光エネルギーを化学エネルギーに変換・貯蔵することで、資源問題や地球温暖化などの環境・エネルギー問題の解決に寄与できると期待されます。その方法の一つとして、現在、光エネルギーを利用して二酸化炭素(CO2)を有用物質に変換する技術の開発が盛んに研究されています。


 本研究では、ルテニウム(Ru)複核錯体を、自己光増感能を有する光触媒として用い、高選択的に一酸化炭素(CO)を与える高効率な光触媒的CO2還元反応を開発しました。光触媒としてRu複核錯体を含むジメチルアセトアミド/H2O混合溶媒に犠牲還元剤を加え、1気圧のCO2雰囲気下、中心波長450 nmの光を10時間照射した結果、加えた犠牲還元剤と基質であるCO2がすべて消費され、COが99%以上の選択性で生成していることが確認されました。また450 nmにおける量子収率は、最大で19.7%と決定できました。気相中の初期CO2濃度を1.5%まで下げても、このRu複核錯体による光触媒的CO2還元反応は高効率に進行し、加えたCO2をほぼすべてCOに変換できることが示されました。


 今回開発したRu複核錯体では、2つのRu錯体部位が互いに光増感作用を及ぼす上に、非常に強いキレート効果により反応条件における錯体触媒の安定性が高められたと考えられます。今後は、触媒活性をさらに高め、大気と同等のCO2濃度(およそ420 ppm)でも、高効率にCO2還元反応が進行する反応系を創出する予定です。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学数理物質系化学域
小島 隆彦 教授


掲載論文

【題名】
Self-Photosensitizing Dinuclear Ruthenium Catalyst for CO2 Reduction to CO
(CO2をCOに還元するための自己光増感能を有するルテニウム複核錯体触媒)
【掲載誌】
Journal of the American Chemical Society
【DOI】
10.1021/jacs.3c07685

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