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iPS細胞誘導を促進させる遺伝子の発見 ~Tcl1遺伝子による代謝変換がiPS細胞誘導を促進する~

2017/03/03

筑波大学 医学医療系 西村健助教、久武幸司教授らの研究グループは、人工多能性幹細胞(iPS細胞)誘導過程で、KLF4がTcl1遺伝子を誘導することによって細胞の代謝を変化させること見出しました。
iPS細胞の誘導時には複雑な細胞機能の変化が起こりますが、その変化の過程で、どの遺伝子がどの様に関与するかは、十分には解明されていません。iPS細胞の誘導過程で細胞機能を変化させる遺伝子とその作用機構を明らかにすれば、完全に初期化されたiPS細胞を効率良く誘導することが可能になると考えられます。
本研究グループは、センダイウイルスベクターシステム(SeVdpベクター)を用いて、初期化誘導遺伝子(KLF4, OCT4, SOX2, c-MYC)の1つであるKLF4の発現量を操作すると、iPS細胞誘導が途中で停止した中間体細胞が作製できることを既に報告しています。今回の研究から、この中間体細胞の初期化を再開するには、KLF4によってTcl1遺伝子が誘導されることが必要であり、この過程で細胞の代謝が変化することを明らかにしました。
また、本研究により、Tcl1遺伝子が細胞内でのエネルギー産生を体細胞型から多能性幹細胞型へと変換することによって、iPS細胞の誘導を促進することが明らかになりました。Tcl1遺伝子は、iPS細胞誘導過程において、細胞によるブドウ糖の取り込みや乳酸産生を増加させると共に、ミトコンドリアでの酸素消費を減少させます。
さらに、Tcl1遺伝子を4つの初期化誘導遺伝子に加えてiPS細胞を誘導すると、従来の方法よりも短期間でより多くのiPS細胞が誘導されてきました。Tcl1遺伝子によって代謝変換を加速すると、良質なiPS細胞を効率良く誘導出来る可能性が示唆されました。


図:iPS細胞誘導におけるTcl1遺伝子を介した代謝リプログラミング
iPS細胞誘導過程において、KLF4依存的に誘導されたTcl1遺伝子によって、解糖系の亢進とミトコンドリアにおける酸化的リン酸化の抑制(代謝リプログラミング)が起きる

掲載論文 

【題 名】A role for KLF4 in promoting the metabolic shift via TCL1 during induced pluripotent stem cell generation.
     (KLF4はiPS細胞誘導においてTCL1を介した代謝変化を促進させる)
【著者名】Nishimura K, Aizawa S, Nugroho FL, Shiomitsu E, Tran YTH, Bui PL, Borisova E, Sakuragi Y, Takada H, Kurisaki A, Hayashi Y, Fukuda A, Nakanishi M, Hisatake K
【掲載誌】Stem Cell Reports
     doi.org/10.1016/j.stemcr.2017.01.026

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