生物・環境

昆虫がヒトと同様の腸ホルモンによる代謝調節の仕組みを持つことを発見(Nature Index: Research highlights 2021年12月)

シュプリンガー・ネイチャーが運営するデータベースサイトNature Indexでは、毎月、主要な82ジャーナルの中から、本学所属の研究者による研究論文1報を、Research highlightsとして選出しています。2021年12月は、本件が紹介されました。
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研究イメージ画像 (Image by Eataru Photographer/Shutterstock)

 多くの生物で、代謝は食餌中の栄養に応じて綿密に制御されています。ヒトなどの脊椎動物では、インスリンとグルカゴンというホルモンが、糖からのエネルギー産生や脂肪への変換によるエネルギー蓄積を制御しており、その分泌調節には腸から分泌されるホルモンが作用しています。昆虫などの無脊椎動物にもインスリン様ホルモンとグルカゴン様ホルモンが存在し、エネルギー代謝に必須であることが知られていますが、その際の腸ホルモンの役割はよく分かっていませんでした。本研究は、キイロショウジョウバエにおいて、腸内分泌ホルモンのニューロペプチドF(腸NPF)が、食餌中の栄養素に応じてエネルギー産生を調節していることを初めて明らかにしました。


 腸NPFは食餌中の糖に反応して血リンパ液へ分泌され、グルカゴン様ホルモンを産生する内分泌器官と、インスリン様ホルモンを産生する神経の双方を刺激することを見いだしました。また腸NPFは、インスリン様ホルモンの分泌は促進的に、グルカゴン様ホルモンの分泌は抑制的に調節することが判明しました。さらに、腸NPFを喪失させると、貯蔵脂肪の減少、過食、血糖値低下などの代謝異常が生じることから、昆虫の腸ホルモンも、ヒトなどと同様の働きをもつことが分かりました。


 エネルギー代謝の制御は生活習慣病の発症に深く関連しており、本研究成果は、そのメカニズム追究における昆虫の有用性を示すものです。また、腸NPFは多くの昆虫に存在しており、農業害虫や衛生害虫のエネルギー代謝を撹乱する新たな技術開発にも資する可能性があります。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学 生存ダイナミクス研究センター
丹羽 隆介 教授

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生存ダイナミクス研究センター