生物・環境

観測と気象衛星データから雲海の発生条件と発生域の特定に成功

研究イメージ画像

 雲海とは眼下に海のように広がる雲(下層雲)の景観で、その場の天気ではありません。雲海が発生する仕組みとして、下層雲の形成過程を当てはめた解説はありますが、雲海そのものを観測して気象条件や発生域を分析した研究は、これまでほとんど行われていませんでした。本研究では、長野県のスキー場において3年間にわたり暖候期の気象観測を実施し、八ヶ岳連峰の西側山麓で早朝に出現する雲海の気象条件を明らかにしました。さらに、気象衛星データを用い、中部山岳域において雲海が出現しやすい地域を特定することに成功しました。


 インターバルカメラと自動気象観測装置のデータを分析したところ、現地で発生する雲海には、大規模なものと東側または西側に偏る小規模なものが存在すること、大規模雲海は早朝5〜6時に発生頻度が極大となることが分かりました。一方、東側に偏る小規模雲海は、八ヶ岳連峰に対する地形性滑昇雲であることが示唆されました。


 また、気象衛星ひまわり8号の画像を利用して、中部山岳域における夜間下層雲の空間分布を経験的に検出するアルゴリズムを構築し、暖候期に下層雲が頻発しやすい12領域を特定しました。そのうちの6領域で同時に下層雲が発生した日(広域発生日)の67%で、沈降性逆転の存在が確認されました。また、上層雲が少ない広域発生日には、大規模雲海が観測されました。以上から、中部山岳域の山間部で早朝に出現する大規模な雲海には、夜間の放射冷却とともに、総観規模の高気圧に伴う沈降性逆転の存在が重要であることを指摘しました。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学生命環境系
上野 健一 准教授


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