生物・環境

2021年ハイチ地震の複雑な発生機構を解明~横ずれ断層と逆断層の破壊をもたらしたプレートの斜め衝突~

研究イメージ画像 (Image by klee048/Shutterstock)

 2021年8月14日、ハイチ共和国南西部においてマグニチュード (M) 7.2の大地震が発生し、建物の崩壊などにより2000人以上の犠牲者を含む、甚大な被害をもたらしました。カリブ海に位置するハイチ周辺は、カリブプレートと北アメリカプレートが、プレートの境界面に対して斜めに衝突しており、地震の発生領域として知られています。こうしたプレート運動は、ハイチを東西に貫く横ずれ断層帯を形成し、隆起や沈降を伴う急峻な地形をもたらしています。しかし、このように複雑なプレート運動が、被害的な大地震の発生やその破壊様式とどのように関係しているのかについては、よく分かっていませんでした。


 本研究では、2021年ハイチ地震の震源過程を解析し、破壊様式の全く異なる逆断層と横ずれ断層によって構成される、極めて複雑な地震破壊が発生したことを明らかにしました。


 2021年ハイチ地震の発生領域はハイチを東西に貫く主要な横ずれ断層帯に位置します。しかし、二つの地震破壊イベントは、どちらも既知の横ずれ断層帯から予想される断層の向きや断層の動きとは相容れない、お互いに全く異なる破壊様式を持つことを見出しました。さらに解析を進めた結果、形状の異なる複数の断層が破壊されることで、建物の崩壊や地すべりの発生につながる地震動を発生させたことが分かりました。


 本研究により、衝突とすれ違いを伴う複雑なプレート運動が、複雑な断層セグメントを形成し、結果的に複雑な地震破壊をもたらすことが明らかになりました。断層形状や破壊様式の異なる複雑な地震破壊の発生は、地震による被害リスクを増大させる可能性があり、本研究成果はハイチにおける今後の地震被害を評価する上で重要な知見です。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学生命環境系/山岳科学センター
奥脇 亮 助教


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