生物・環境

D-アミノ酸はホヤと哺乳類で皮膚分泌に関わる共通の機能をもつ

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 生物にとって非常に重要な化学物質であるアミノ酸は、光学活性という性質を持っており、同じ化学式であっても、L体とD体の2種類が存在します。不思議なことに、生物の体内にあるアミノ酸はほぼ全てL体です。しかしながら、わずかにD体が存在し、種々の機能を持つことが分かりつつあります。その代表例がD-セリンで、哺乳類では、脳内での情報伝達や、皮膚の角質層の形成に関わります。D-セリンは多くの動植物に含まれていますが、哺乳類以外での機能はよく分かっていませんでした。


 本研究では、哺乳類に最も近い無脊椎動物であるホヤの変態の仕組みを解析し、D-セリンが変態に必要なことを明らかにしました。ホヤは、幼生の時にはオタマジャクシに似た形態をしていて遊泳していますが、変態によって長い尾部を体内に吸収し、岩などに固着して生活する成体となります。


 ホヤ幼生では、D-セリンの合成酵素(セリンラセマーゼ)が発現しており、D-セリンを作っています。遺伝子操作によりD-セリンの合成をなくすと、尾部の吸収が途中から進まなくなります。尾部の吸収に必要なスペースは、皮膚の細胞が持つ小胞から内容物が分泌されて作られますが、D-セリンはこの皮膚からの分泌に必要なことが分かりました。哺乳類でもD-セリンが皮膚からの分泌に関わっていることから、D-セリンは、動物間で共通した機能を持っていると考えられます。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学生命環境系
笹倉 靖徳 教授

富山大学学術研究部 医学系
森 寿 教授

岡山大学学術研究院自然科学学域・理学部附属臨海実験所
濱田 麻友子 准教授

公益財団法人サントリー生命科学財団 生物有機科学研究所
佐竹 炎 主幹研究員

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