生物・環境

最小の捕食者である海洋微小原生生物ミノリサ属の新種3種を発見

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 これまで1種しか知られていなかった海洋の微小原生生物ミノリサ属の新種を3種発見し、記載しました。これまで不明だったミノリサ属内の種多様性が明らかになったことで、環境中に生息しているミノリサ属のより正確な同定や、その生態的役割の解析につながると考えられます。

 ミノリサ属は、最小の捕食者とも言われる微小な単細胞性真核生物(原生生物)の一群です。世界各地の海洋に分布し、特に沿岸域に多く生息するため、海洋生態系において重要な役割を果たしていると考えられています。また、葉緑体を持つクロララクニオン藻類と近縁であることから、クロララクニオン藻類がどのように葉緑体を獲得したのかを解明するためにも、重要なグループです。しかしながら、ミノリサ属にはこれまでにMinorisa minuta 1種しか記載されておらず、入手可能な培養株も存在しないことから、分類学的な研究は進んでいませんでした。


 本研究では、日本各地の沿岸で採集した海水から、ミノリサ属原生生物の培養株5株を確立し、詳細な顕微鏡観察と遺伝子の塩基配列の比較を行いました。その結果、これら5株がいずれもミノリサ属の特徴である、細胞にらせん状に巻き付く1本の鞭毛を有すること、一方で、細胞の大きさや仮足の形状は培養株ごとに異なることが分かりました。さらに、塩基配列を比較したところ、5株中3株がM. minutaとは遺伝的に異なっており、これら3種を、ミノリサ属の新種M. fusiformis、M. magna、M. megafusiformisとして記載しました。


 本研究によって、これまで不明だったミノリサ属原生生物の多様性が明らかになりました。今後、今回得られた培養株をもとに、海洋における存在量が豊富なミノリサ属の生態的役割の解析や、クロララクニオン藻類の葉緑体獲得に伴う進化過程の解明ができると期待されます。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学生命環境系
白鳥 峻志 助教

掲載論文

【題名】
Molecular and morphological characterization of three novel Minorisa species (Chlorarachnea) and proposal for an emended description of the M. minuta.
(Minorisa属3新種の分子的および形態的特徴とM. minutaの記載修正の提案)
【掲載誌】
Phycological research
【DOI】
10.1111/pre.12533

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