医療・健康

血管障害後の新生内膜形成に関わる細胞の役割を解明

研究イメージ画像 (Image by Christoph Burgstedt/Shutterstock)


アテローム性動脈硬化症は、令和元年の日本人の死因第2位である心疾患や脳血管疾患の原因となる病態です。アテローム性動脈硬化症による冠動脈狭窄症や頸動脈狭窄症と、それらに対するバルーン付きカテーテル操作やステント挿入後に生じる再狭窄などの血管疾患では、血管の内側の層が厚くなる新生内膜形成を伴うことが分かっています。血管疾患を理解するためには、この新生内膜形成のメカニズム解明が重要な鍵となります。


これまでの研究で、新生内膜の形成には血管中膜に存在する細胞や血管外膜に存在する細胞が関与していることが知られていましたが、新生内膜形成に関わる細胞の詳しい性質は明らかになっていませんでした。そこで本研究では、血管壁に存在する細胞の挙動を追跡し、新生内膜形成に関わる細胞の動態の一端を明らかにしました。


血管壁を構成する細胞では、血小板由来成長因子受容体アルファ(PDGFRa)が発現していることをヒントに、PDGFRaを発現する細胞を蛍光タンパク質で標識できるマウスを用いて、病状の異なる3種類の血管障害モデルを作製し、標識細胞が新生内膜形成にどのように関わるかを追跡しました。その結果、血管損傷の程度によって新生内膜を構成する細胞の種類が異なること、さらに、PDGFRa陽性細胞の血管障害に対する応答性が異なることを見いだしました。


本研究により、新生内膜形成機構におけるPDGFRa 陽性細胞の役割が明らかとなり、動脈硬化をはじめとした血管疾患治療のターゲットになり得ることが期待されます。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学生存ダイナミクス研究センター
木村 健一 助教
柳沢 裕美 教授

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