医療・健康

特定健診での尿潜血検査の必須化は IgA腎症と膀胱がんの早期発見・治療に有用で医療費削減につながる

研究イメージ画像 (Image by Lothar Drechsel/Shutterstock)

 血尿とは尿に赤血球が混じった状態であり、尿の色調変化で気付かれる肉眼的血尿と、尿試験紙法による尿潜血反応で発見される顕微鏡的血尿があります。血尿の頻度は、例えば、沖縄における住民健診受診者では、男性で3.5%、女性で12.3%であり、加齢とともに増加します。肉眼的血尿では自主的な病院受診につながりやすいですが、一方、顕微鏡的血尿は自覚症状に乏しいため、健診や外来・入院の検査で偶然発見されることが多く、IgA腎症や膀胱がんなどの重篤な疾患になっていることもあります。尿試験紙法による尿検査は簡便かつ安価であり、無症状の患者を早期発見し、適切な治療につながる可能性があります。しかし、我が国の40-74歳を対象とした特定健診では、尿潜血検査自体が必須化されていません。


 本研究では、特定健診において尿潜血検査を必須化した場合の、IgA腎症と膀胱がんの早期発見・早期治療に関する費用対効果を分析しました。その結果、特定健診における尿潜血検査の必須化は、健診受診者一人当たり年間97円の費用削減をもたらし、また、質調整生存年(QALY)の増分効果(健康寿命の延伸)は0.000098QALYとなり、費用減効果増という極めて優れた結果になりました。


 本研究により、特定健診において尿潜血検査を必須化すると、無症状のIgA腎症と膀胱がんの患者を早期発見・早期治療することが可能となり、将来の医療費削減につながる可能性が示されました。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学医学医療系
近藤 正英 教授

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