医療・健康

全身性エリテマトーデスの発症に関与する遺伝因子を特定

研究イメージ画像 (Image by Saiful52/Shutterstock)

 代表的な膠原病である全身性エリテマトーデス(SLE)は、複数の遺伝因子と後天的因子の複合によって発症に至る多因子疾患と考えられています。免疫応答の個人差に影響するヒト白血球抗原(HLA)は、SLE発症に関連する主要な遺伝因子の一つですが、どのように発症に寄与しているかは十分解明されていませんでした。


 SLEの疾患感受性に関連する遺伝子配列タイプは、人種によって異なっており、日本人集団では、HLA-DRB1*15:01という遺伝子配列タイプが、SLEに対するかかりやすさ(疾患感受性)に関連します。ヨーロッパ系集団においても、同様のタイプがSLE感受性に関連していますが、HLA-DRB1*15:01と、染色体上隣接するXL9領域に位置し、HLA遺伝子群の発現を調節する遺伝子間領域のバリアント(DNA配列の個人差)を特定の組み合わせで保有する割合が極めて高いことから、HLA-DRB1*15:01自体とXL9領域における遺伝子発現制御のどちらが重要なのかを識別することが困難でした。


 本研究では、日本人集団では、HLA-DRB1*15:01とXL9領域の組み合わせがそれほど強くなく、遺伝疫学的解析により、この2カ所の効果を切り分けることが可能であることが分かりました。さらに、そのうち、日本人においてSLE発症に一義的に関連するのは、HLA-DRB1*15:01であり、XL9領域の関連は二次的であること、すなわち、SLE発症には、HLA遺伝子自体の多様性に基づくアミノ酸配列の違いが影響している可能性が高いことが示唆されました。


 また、多因子疾患の発症に寄与する遺伝子バリアントを特定する上で、遺伝学的背景が異なる複数の集団を解析する手法の有用性が再確認されました。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学医学医療系
土屋 尚之 教授
川﨑 綾 助教

掲載論文

【題名】
Genetic dissection of HLA-DRB1*15:01 and XL9 region variants in Japanese patients with systemic lupus erythematosus: primary role for HLA-DRB1*15:01
(日本人全身性エリテマトーデス疾患感受性におけるHLA-DRB1*15:01とXL9領域の遺伝学的切り分け:HLA-DRB1*15:01が一義的に関与)
【掲載誌】
RMD Open
【DOI】
10.1136/rmdopen-2023-003214

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