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不確実な災害リスク環境における避難行動モデルを開発

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(Image by Fly_and_Dive/Shutterstock)
 災害避難行動は、将来受ける災害リスクを避けるための行動です。しかしながら、例えば、地震が発生した直後に、いつ、どのくらいの津波がどこまでやってくるのかを、正確に知ることは不可能です。こうした将来リスクの不確実性を考慮して、人の行動を再現するモデルは、これまでありませんでした。

 本研究では、現在の行動選択によって将来に得る行動の利得を評価する既存モデルを拡張し、行動パラメータを推定するための高度な独自アルゴリズムにより、将来に得る利得に対する人々の認識の違いを評価するモデルを開発しました。また、2011年の東日本大震災における岩手県陸前高田市の避難行動データを用いた実証分析を行い、開発したモデルが既存モデルよりも行動の予測性能が高いことを確認しました。この実証分析より、津波が見える前までは楽観的なリスクを想定している傾向が強いことが明らかになり、このような楽観的な想定が、避難開始が遅れた要因の一つであることが示唆されました。


 避難行動予測の再現性を高め、空間的な特徴や個人属性との関係性を明らかにすることは、都市空間の構成による避難のしやすさの評価につながり、リスクに強靭な都市形成にも貢献すると期待されます。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学システム情報系
浦田 淳司 准教授

東京大学大学院工学系研究科
羽藤 英二 教授


掲載論文

【題名】
Dynamic discrete choice model and its estimation algorithm with dynamic inconsistent expected utility in an uncertain situation
(不確実な状況下における期待効用の動的不一致性を考慮した動的離散選択モデルとその推定アルゴリズム)
【掲載誌】
Transportation Research Part C: Emerging Technologies
【DOI】
10.1016/j.trc.2023.104408

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