テクノロジー・材料
太陽光発電+蓄電池システムの運用をAIで最適化する手法を開発

太陽光発電は天候に左右されやすく、計画通りの発電ができない場合、電力市場では「インバランス料金」と呼ばれる罰則的費用が発生します。本研究では、人工知能(AI)を用いて太陽光発電と蓄電池の運用を最適化する手法を開発し、従来に比べ最大47%のインバランス料金の削減を実現しました。
再生可能エネルギーの普及に伴い、太陽光発電と蓄電池を組み合わせた電力供給システムの活用が重要性を増しています。電力市場では、発電事業者は翌日に供給する電力量を「計画発電量」として提出し、これに基づいて取引を行います。しかし、太陽光による発電量は天候に左右されやすく、計画と実際の供給量にずれが生じると市場全体の需給バランスが崩れ、「インバランス料金」と呼ばれる罰則的な費用が発生します。これを制御するための計算方法が提案されてきましたが、現実の急な天候変化や市場の複雑な動きといった不確実性を十分に反映できないという課題がありました。
本研究では、不確実性を含む問題に対応可能な深層強化学習AIを用いて、太陽光と蓄電池の運用を市場ルールに適合させつつ最適化する新たな手法を開発しました。実際の市場データを用いたシミュレーションの結果、本手法は、従来の制御手法に比べてインバランス料金を約47%削減し、他の深層強化学習モデルと比べても約26%削減できることが確認されました。また、四季を通じて安定した利益を維持できることも示されました。
本研究成果は、収益性を追求するだけでなく、インバランス料金を回避し、安定的に再生可能エネルギーを市場に供給できる仕組みの構築につながるものです。さらに、蓄電池や電気自動車などの家庭用電源の集合を新たな電力源とする仕組みの基盤になり、電気料金の安定化や停電リスク低減といった社会的便益をもたらすと期待されます。
PDF資料
プレスリリース研究代表者
筑波大学システム情報系小平 大輔 助教
大曽根 佑紀 構造エネルギー工学学位プログラム(博士前期課程)2年次
掲載論文
- 【題名】
-
Imbalance-Aware Scheduling for PV Battery Storage Systems Using Deep Reinforcement Learning.
(深層強化学習を用いた太陽光発電-蓄電池システムのインバランス考慮型スケジューリング手法の開発) - 【掲載誌】
- IEEE ACCESS
- 【DOI】
- 10.1109/ACCESS.2025.3615960
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システム情報系構造エネルギー工学学位プログラム