テクノロジー・材料
燃料電池内部の電流分布を非接触で推定するモデルを開発
電流が流れると周囲に磁場が生じるという原理を利用し、燃料電池内で実際に計測した電流と磁場のデータから、非接触で内部の電流分布を推定するモデルを開発しました。これをさらに最適化し、電流分布の推定精度を高め、電池の不具合時に生じる現象を再現することに成功しました。
固体高分子形燃料電池は、発電時に二酸化炭素を排出しないクリーンな発電技術です。しかし、発電に伴って生じる水が電池内部に滞留する「フラッディング」や、逆に電解質膜が乾いてしまう「ドライアウト」が起こると、電池内部の電流の流れ方(電流分布)が不均一になり、性能低下や材料の局所的な劣化を招きます。これらを防ぐには、運転中の電池内部の状態を把握することが不可欠ですが、そのために電池内部に基板やセンサを組み込むと、電池構造そのものを変える必要が生じます。
本研究では、電流が流れると周囲に磁場が生じるという原理を利用して、燃料電池内で実際に計測した電流と磁場のデータから、非接触で内部の電流分布を推定するモデルを開発し、実験によりその精度を検証しました。9分割した集電板をもつ特殊な電池を用いて実際の電流値を参照値として取得し、9点で計測した磁場から電流分布を求めたところ、負荷電流を分割数で割った値を計算の初期値として与えると、推定誤差を大幅に低減できることが分かりました。さらに、フラッディング時には空気入口側(上流)の電流が大きく、ドライアウト時には出口側(下流)の電流が大きくなるという不具合特有の傾向も再現されました。
本手法は、電池を改造することなくリアルタイムかつ非接触で内部状態を診断できる可能性を示すものです。今後は、推定モデルの高度化や逆問題の数値的安定性の向上、負荷変動時への対応を進め、燃料電池システムの故障予兆診断技術の確立を目指します。
PDF資料
プレスリリース研究代表者
筑波大学システム情報系秋元 祐太朗 助教
掲載論文
- 【題名】
-
Experimental investigation of current distribution analysis method for proton-exchange membrane fuel cells using magnetic sensors
(磁気センサを用いた固体高分子形燃料電池の電流分布解析手法に関する実験的検討) - 【掲載誌】
- International Journal of Hydrogen Energy
- 【DOI】
- 10.1016/j.ijhydene.2026.157135