社会・文化

数学教育において相対的な真理観を育成するための課題設計原理を構築

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(Image by Peter Hermes Furian/Shutterstock)
 数学の学習において、前提を意図的に曖昧にした課題を設計・実践することにより、結論の真偽は前提によることや、真偽を決めるためには前提を明確にする必要があることを、児童生徒が理解できるようになることを示しました。

 数学の問題では正答がただ一つに決まることが多いですが、命題の真偽が前提によって変わる場合もあります。こうした真理の相対性は、数学の発展に大きな役割を果たしてきました。また、私たちが生きている社会や世界において、よりよい合意形成を得るためには、互いの背後にある前提を的確に見極めたり、前提を明確にして議論を行うことが大切です。このように、相対的な真理観や前提についての認識を育成することは極めて重要ですが、初等・中等教育におけるその育成方法は明らかにされてきませんでした。


 そこで、本研究では、数学の問題・課題の設計において、とりわけ個々の具体的な課題の設計を裏付ける一般的な原理を構築することに着目しました。これにあたり、通常の数学の教材開発とは異なり、課題の条件を意図的に曖昧にするというアイデアを導入し、それによって児童生徒の意識が課題の前提に向かうことを意図しました。このアイデアに沿って課題設計原理を構築した上で、小中学校の教師と協働しながら、課題の設計、授業実践、実践の分析、原理の洗練、の検討サイクルを繰り返しました。その結果、課題の前提を意図的に曖昧にすることで異なる正答が生まれるようにする等の課題設計原理を構築し、その有効性を示しました。


 本研究で構築した原理に基づいて個々の教師が自ら課題を設計して実践することにより、児童生徒の相対的な真理観がさまざまな場面で育成されるようになると期待されます。


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プレスリリース

研究代表者

筑波大学人間系
小松 孝太郎 准教授

掲載論文

【題名】
Introducing students to the role of assumptions in mathematical activity.
(数学的活動における前提の役割への誘い)
【掲載誌】
Cognition and Instruction
【DOI】
10.1080/07370008.2023.2293695

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