HIGHLIGHTS
一連の毎日新聞報道を受けて(7月14日)
令和7年7月14日
国立大学法人 筑波大学
本学の人文・文化学群の将来像に関して、毎日新聞による令和7年6月26日付のネット配信、および6月27日付の紙面において、再び、誤った報道が繰り返されました。
このため、本学は6月27日に毎日新聞本社に対し抗議を申し入れました。毎日新聞社側の対応は、見出しの一部を修正したものの、内容自体に問題はないとするものでした。ここでは、一連の毎日新聞記事の誤りについて記し、本学に在籍している学生、本学を志望される生徒やご家族、大学受験に関し進路相談に対応される方々、そして、日ごろ本学へのご支援を賜っております皆さまにおいて、本学が決して"人文系軽視"をしていないことをご理解いただくために、正確な情報を提供いたします。
〇人文・文化学群の将来像を議論
発端は毎日新聞による6月6日、7日付の複数の記事です。これらの記事のポイント(論旨)は3つあります。具体的には、 ①本学に人文系3学類(※注)を統合する「方針」があり、 ②それは「上層部」により、現場の議論がないままに示されたものであり、 ③背景には「人文系軽視」がある、というものです。
本学は、6月9日付けでホームページにおいて、 ①方針が決定された事実はないこと、 ②学群・学類における現場レベルの議論として将来像の検討が行われていること、 ③人文・文化学群が自らの未来像を検討している中で"人文系軽視"という視点はないことを説明しました。(「毎日新聞の報道に関して(6月9日)」)
本学は時代の変化や学問の発展に応じた教育の改革を常に進めており、それは教育機関としての責務と考えています。人文・文化学群で行われている将来像の議論とは、時代の変化や学問の発展を踏まえ、人文・文化学群が担う学問領域について、どのような学びが必要か、それをどのように提供するかというものです。議論の結果がいかなるものであれ、同学群で現在教えられている学問領域の教育研究が将来的になくなるということはありません。
(注)人文系3学類とは、「人文学類、比較文化学類、日本語・日本文化学類」を指します。
○今回の報道の誤り
筑波大学では6月26日に、学長や関係する副学長等が出席した「定例記者会見」を行いました。毎日新聞の記者が、この中で質問を行い、学長、副学長、および人文社会系長が回答しました。この席で、大学側は6月6日付の毎日新聞記事のポイント(論旨)をすべて否定しました。
それにもかかわらず、毎日新聞の新たな記事では、ネット発信「筑波大の人文系3学類統合方針、大学側が初めて認める」、紙面「筑波大人文系の統合議論認める」という見出しが付され、双方の記事本文で、人文社会系長の発言を引用した上で、「統合方針について大学側が認めるのは初めて」と記載されています。
しかし、人文社会系長は、本学が6月9日付けでホームページにおいて説明したとおり学群・学類で「議論」を続けてきたこと、その議論は学類レベルで(ボトムアップで)生じたものであって毎日新聞が言う"上層部"によるトップダウンの議論では無いこと、本学では人文社会科学分野も重視していることを発言しただけであり、大学の統合方針を認める趣旨の発言はありませんでした。これが6月26日に為された質疑応答における正しい事実です。
新たな記事は、6月6日付の毎日新聞報道を本学が認めたかのような(誤った)認識を与えかねないものであり、かつ、報道機関が事実と異なる内容を報じることは、その信頼性を揺るがす事とも考え、直ちに、毎日新聞本社に抗議と再発防止の申し入れを行いました。
その結果、ネット発信記事の見出しは、「統合方針」から「統合議論」に改められましたが、記事本文の「統合方針について大学側が認めるのは初めて」という記述の修正は拒否されています。

https://mainichi.jp/articles/20250626/k00/00m/040/278000c,(参照2025-6-26および2025-6-30)
〇"文理協働"で新たな学問領域を切り拓く
本学は、学問領域の壁を低くし、異分野の研究者が協働することを大きな理念の一つに掲げ、「文理協働」といった、文系と理系、それぞれの研究者による協力と調和を目指しています。"文理を俯瞰した学び"をモットーとし、文系の学生が理系の講義を履修することや、その逆を必須とする独自の教育課程を長年進めてきました。
時代の変化や学問の発展に応じた教育組織の不断の改革と新たな学問領域の開拓は求められることですが、一方で、入学時に提示した教育課程に関しては、卒業まで変わることは全くありません(※注)。従って、現在「人文・文化学群」で学ぶ学生の教育課程が変わることもありません。
(注)一般に、大学の教育組織や教育課程の改編が実施されても、在学生が入学時に提示された教育課程は維持されます。「学年進行」と言われるもので、仮に、入学後に教育組織が改編されても、すでに入学している学生に対しては、在籍するすべての学生が卒業(もしくは退学)するまで、入学時の教育組織を存続させ、卒業要件を満たせるようにすることになっています。
本学を志望される生徒や家族の皆さまに、正しい情報を提供することが高等教育機関たる本学の責務です。本学の根本的理念や施策を外部の者が事実に基づかない形で否定する、あるいは誤った印象を与えることは、あってはならないことと考えています。
最後に、本学は様々な方々のご支援や協力で成り立っています。メディアとの健全なリレーションもその一つであり、メディアの方々には正確な事実に基づいて多様な記事を発出していただいております。批判があれば、甘んじて受け入れるべく、真摯な対応が求められるとも認識しております。このような「見解」を公表することは極めて異例であり、残念なことでもあります。
本学は、今後も様々なステークホルダーとの良好な関係を維持していくべく、正確な情報発信に努めて参ります。皆さまのご支援とご理解を賜りますよう、改めてお願い申し上げます。